Baduizm - Erykah Badu
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」という随筆がありますが,その文章に写真がついたものを本屋で偶然見つけ,つい買ってしまいました.
デザイナー,建築家,ミュージシャン,画家,編集者,読書家...
美大・芸大系の学生,
必読の書
と帯には書かれています.私はどれにも当たりませんが,音楽鑑賞者としても興味深い内容でした.今回取り上げるエリカ・バドゥの「Baduizm」は,きっと谷崎も気に入ることでしょう.陰翳礼讃で好きな一節を以下に引用します.
かつて漱石先生は「草枕」の中で羊羹の色を賛美しておられたことがあったが,そう云えばあの色などはやはり瞑想的ではないか.玉のように半透明に曇った肌が,奥の方まで日の光を吸い取って夢見る如きほの明るさを啣(ふく)んでいる感じ...
薄暗い闇の中にほのかに浮かび上がるような,アルバムを一貫して覆う幽玄なムード,甘いベースライン,品の良さ.どこを取っても素晴らしい.言を借りれば,非常に瞑想的な音楽です.薄明かりの部屋でこそ映える,漆器のような一枚だと思います(ちょうどジャケットの文字も蒔絵みたいですね).