As Falls Wichita, so Falls Wichita Falls - Pat Metheny & Lyle Mays
非常に長いタイトルで,未だに間違えそうになります.Pat Metheny関係のアルバムで,「Still Life」と争うくらいよく聴くアルバムです.1981年発表なので,彼のキャリアの中では割と初期の方の作品です.パーソネルはPat Methenyがギターとベース,Lyle Maysが鍵盤楽器とハープ,Naná Vasconcelosが打楽器となっています.Pat Methenyの一般的なイメージであろう,フュージョン的なサウンドを求めていると,アルバム名にもなっている1曲目の「As Falls Wichta ,~」に面食らうことでしょう.というのもこの曲は20分を超える大曲で,フュージョンと言うよりもっと前衛的な,現代音楽のような印象を与えるため,退屈さを感じてしまうかもしれません.それはかつての私ですが,いつからかこの曲をよく聴くようになりました.音楽をざっくり短い音楽と長い音楽に分けた時に,短い音楽を聴くという行為はそれを自分のいる世界に持ち込んでおもちゃのように対象化して愛でたり楽しんだりというイメージですが,長い音楽の場合はむしろ音楽の作る世界に自分が入り込むような体験なんだと思います.この曲も要するに半分映画みたいなものですね.聴いているといつの間にか知らない空間に引きずり込まれていく感覚があります.そしてそのままアルバムを全部聴いてしまうという仕組みになっていて,1曲目に長い音楽を入れるというのは非常に合理的な発想です.スキップされなければの話ですが...そして打って変わって軽快なピアノが楽しい「Ozark」,Bill Evansに捧げられた「September Fifteenth」,矢野顕子にもカバーされたエバーグリーンな名曲「It's For You」など聴きどころ満載です.最後の曲「Estupenda Graça」は短いですが,浄化されるような美しい曲です.全体的にしっとり落ち着いた作品で,イライラしているときとかに聴くと効果てきめんです.