HITNRUN PHASE TWO - Prince
音楽というのはどこにフォーカスして聴くかで全然違う印象を受けるもので，良さが分からない音楽というのはそのピントがボケているせいであることが主な原因だと思います．プリンスは長いこと良さが分からずモヤモヤしていたミュージシャンですが，彼の出自を知ることで腑に落ちた次第です．
音楽のレビュー等でjames brownやslyなどの著名なfunkミュージシャンと共に挙げられがちなプリンスですが，そのような評論に踊らされた私は「いかしたカッティング！ベース！ドラムス！」を勝手にプリンスに期待していました．その期待はチープなシンセ音と単調なリズムマシンにあえなく裏切られるのですが，彼がミネアポリスという黒人の割合が極端に少ない都市出身で，黒人の音楽を満足に聴けず主に白人のロックをラジオから聴いていたことを知り，自分が黒人に対して勝手にみんなファンキーみたいな先入観を持っていたことに気付いたのでした．プリンスは黒人ですがルーツはロックであり，彼の音楽にファンクネスを見出そうとして見いだせなかったことがモヤモヤの原因だったことに気付き，そんな自分を恥じると共にジャンルの区別なく彼の音楽を聴くことで良さが分かるようになりました．
このアルバムは彼の遺作となりましたが，私の先入観のプリンスと合致した非常に聴きやすいアルバムでした．しかし1曲目の「Baltimore」は黒人差別の問題に根差したメッセージ性の強い曲のようで，まるで私のある意味差別的だった音楽の聴き方をたしなめられているようです．
